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Lipofectamin2000を用いた培養細胞へのsiRNA導入法

東京医科歯科大学 大和建嗣先生




プラスチックウエア

マイクピペットチップや微量遠心管などはRNase-freeのものを使用する。
RNaseの混入を防ぐために,オートクレーブ等で滅菌するまえでも直接手では触れない。実験ベンチ周囲をできるだけ整頓し清潔にする。
siRNAの分注と保存1 siRNAの分注と保存2
  • 1  トランスフェクション条件の最適化法

    一般には,lamin A/CやGAPDH等の内因性遺伝子に対するsiRNAを導入し、これらの発現をウエスタンブロット法で解析することによってトランスフェクション条件の最適化が行われている。
    しかし我々は,ウエスタンブロット法よりも簡便で定量性に優れたレポーター遺伝子アッセイを用いて最適化を行った。
    このために培養細胞にGFPやルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を安定導入したクローンを分離する。これらの細胞にレポーター遺伝子に対するsiRNAを用いて導入試薬や導入条件を選定する。一般に導入試薬(リポソーム)の濃度が高いほど導入効率は高くなり,同時に細胞毒性も強くなる。最適化は,導入効率を保ちながら細胞毒性を許容範囲にまで下げることを目指す。
    miRNAの生理的濃度に近い濃度でsiRNAによるRNAiを誘導することが望ましく,そのためには少なくとも5 nM以下で,理想的には1 nMで90%以上のレポーター活性の抑制を達成することを目指す。
    我々は,HeLa細胞,SK-OV-3細胞,SiHa細胞にpcDNA3をベースにしたホタルルシフェラーゼ発現プラスミドを導入し,G418存在下で恒常的にルシフェラーゼを発現するクローンを分離した。ホタルルシフェラーゼに対するsiRNAを設計合成して,それぞれの細胞由来のクローンに対する導入条件を決定した。



  • 2 培養細胞

    指数関数的に増殖している状態の細胞を使用する。
    細胞は、入手した時点で細胞を増やし、出来るだけ多くクライオストックを作成する。
    siRNA 室温で解凍
    1シリーズの実験毎に細胞を新しく解凍し、細胞の増殖状態が良くなるまで(1週間から2週間)継代する。あまり長く継代をせず、実験に用いる細胞の継代数は出来るだけ同じものを用いる。
    培養細胞の名称は同じでもその性質はラボ毎でかなり異なる場合があり、実験を開始するにあたり,ATCCやセルバンクなどから入手することが望ましい。
    CO2インキュベーターは必ず水平に設置されていることを確認する(シャーレ内で細胞の分布に偏りがないようにするため)。

    トランスフェクション前日、プレートに細胞を播く。
    トランスフェクション当日、30%程度のコンフルーエンシーがよい。
    6穴プレートでは各ウエルに下記の細胞数を播く。培地は10%FCS(+)、抗生物質不含で各ウエルに2mL使用する。細胞をプレートした直後は24ウエルプレート以上のサイズのものは、前後方向および左右方向に少し乱暴に大きく揺することで細胞を培養面に均等に分布させることができる。96ウエルプレートでは揺するとかえって細胞が中央に偏在してしまうので揺すらない。

    SiHa細胞 1〜2 x 105
    SK-OV-3細胞 0.5〜1 x 105
    HeLa細胞 0.5〜1 x 105

    細胞数は、培養面積に比例させる。
    細胞数が少ないとsiRNAの導入効率が高くなるが、導入試薬による細胞毒性が強くなる傾向がある。
    トランスフェクション当日の培地交換やPBSによる洗浄は必ずしも必要ない。


  • 3 siRNAトランスフェクション(5 nM以下の濃度での導入)

    ここではインビトロジェン社のLipofectamine2000(LP2000)を上述の方法で最適化した導入方法を紹介する。
    siRNAをOpti-MEMによって稀釈するOpti-MEMを40 uL取る siRNAをOpti-MEMによって稀釈するOpti-MEMを40 uL取る
    1)siRNA 凍結ストック (50 uMで10 uLづつ分注し,-20℃以下で凍結保存したもの) を解凍し,Opti-MEM I培地  を用いて10uMに稀釈する。
    Opti-MEM Opti-MEMでsiRNAを稀釈する解凍したsiRNA 稀釈したsiRNAを1uLとる
    滅菌したマイクロチューブに稀釈した10 uM siRNAを1 uL取り、Opti-MEM I培地(インビトロジェン)を加えて50 uLとし、ボルテックスする。
    稀釈したsiRNAを1 uLをOpti-MEMと混和する 稀釈したsiRNAを1 uLをOpti-MEMと混和する
    LP2000稀釈液Aを作成する。

    SiHa細胞,SK-OV-3細胞用
    マイクロチューブにOpti-MEM I培地を48.4uL取り、これにLP2000を1.6uL加えて50uLとし数秒間ボルテックスする。稀釈後5〜10分室温で静置する。
    注意:この条件は,SiHa細胞,SK-OV-3細胞に25nM以下での導入のためのもので,これ以上の濃度では核酸に対するLP2000の濃度が低いため、かえって導入効率が低くなる。
    Opti-MEMでsiRNAを稀釈する siRNAを10 uL取る Opti-MEMでsiRNAを稀釈する

    HeLa細胞用
    マイクロチューブにOpti-MEM I培地49.5〜49.6uLとりこれにLP2000を0.4〜0.5uLを加えて50uLとし数秒間ボルテックスする。稀釈後5〜10分室温で静置する。
    注意:この条件は、HeLa細胞に5nM以下での導入のためのもので、これ以上の濃度では核酸に対するLP2000の濃度が低いため、
    かえって導入効率が低くなる。

    Lipofectamine 2000 Lipofectamine 2000の稀釈 Lipofectamine 2000の稀釈Opti-MEMにLF2000を加える


    2)稀釈したsiRNAの入ったマイクロチューブにLP2000稀釈液Aを50uL加えて数秒間ボルテックスする。
      (この100uL混和物を2mLの培地に加えるとsiRNAの終濃度は5nMとなる。)


    3)低濃度のsiRNAとトランスフェクションしたい場合、例として終濃度を1 nMにしたい場合を以下に記す。

    LP2000稀釈液 B を作成する。

    SiHa細胞,SK-OV-3細胞用
    マイクロチューブにLP2000を1.6 uL取りOpti-MEM Iを加えて100 uLと数秒間ボルテックスし,稀釈後5〜10分室温で静置したものを事前につくっておく。

    HeLa細胞用
    マイクロチューブにLP2000を0.4〜0.5uL取りOpti-MEM Iを加えて100uLと数秒間ボルテックスし,稀釈後5〜10分室温で静置したものを事前につくっておく。

    先の2)のsiRNA-LP2000複合体の20uLをあたらしいマイクロチューブにとり、これにLP2000稀釈液Bの80uLを加えて数秒間ボルテックスする。
    2 )あるいは 3 ) でボルテックスした後は15〜30分間、室温で静置し、1ウエル当たりsiRNA-LP2000複合体を100uLずつ培地に加える。LP2000の量は、siRNAの濃度に比例させるのではなく培養液量に比例させる。

    トランスフェクション後の培地交換は必ずしも必要ではない



    室温で20分静置後培養に加える 室温で20分静置後培養に加える
    4)48時間から72時間培養後、発現解析をおこなう。
    CO2インキュベーターで48〜72時間培養する